2020年3月4日更新
奈良・室生寺(金堂以外の「みほとけ」編)~室生仏教美術~
今回は室生寺の金堂以外に安置されている仏像についてご紹介します。
「室生寺(由来編)」、「室生寺(建物編)」、「室生寺(金堂の「みほとけ」編)」も合わせてお楽しみください。
興福寺からやってきた「弥勒菩薩」
弥勒堂のご本尊「弥勒菩薩立像(みろくぼさつ りゅうぞう)」は重要文化財に指定されています。
この仏様は、室生寺の創建に深く関わった興福寺のお坊さんを称えて興福寺から譲ってもらった仏様だと伝わります。
奈良時代の末にかやの木から掘り出された、身の丈89センチの仏様です。
弥勒菩薩は未来仏とされているため、小さい子どもの未来を守る仏様として、信仰を集めています。
ふっくらとしたお顔立ちは、2019年1月に引退した稀勢の里関(現在の荒磯親方)に似ていると思うのは私だけでしょうか?
日本一美男子な「釈迦如来坐像」
弥勒堂の釈迦如来坐像(しゃかにょらい ざぞう)は国宝に指定されており、客仏として安置されています。
榧(カヤ)の木の一木造で平安前期彫刻の優れた作品です。
この仏様の特徴は螺髪(らほつ)がない事です。
写真家・土門拳(どもん けん)は室生寺の釈迦如来坐像を、「日本一美男子な仏様」と称しています。
室生寺のご本尊は「如意輪観音菩薩」
灌頂堂(かんじょうどう)の正面には、※日本三大如意輪(にほんさんだい にょいりん)の一つに数えられている如意輪観音菩薩像(にょいりん かんのんぼさつ)が安置されています。
平安時代に造られた檜の一木造で、重要文化財に指定されています。
※日本三大如意輪:室生寺(奈良県)、観心寺(大阪府)、神呪寺(かんのうじ:兵庫県)の如意輪観音を指す。
如意輪観音は坐像または半跏思惟像(はんかしいぞう=片足のみ立て膝の姿)が多く、立ち姿のお姿はほとんどありません。
室生寺の如意輪観音菩薩も半跏思惟像で、如意宝珠(にょいほうじゅ)と法輪(ほうりん)を持っています。
如意宝珠とは意のままに願いを叶える宝という意味を持ち、上部が尖った球形をしています。
法輪は車輪のような形で仏具の一つです。
人々の迷いを打ち砕き、お釈迦様の教えをあらゆる人々に届かせる意味を持っています。
如意輪観音菩薩は心願成就の仏様、すなわち願いを叶えてくれる仏様です。
このことを言い表しているのが灌頂堂の※扁額(へんがく)です。
悉く(ことごとく)の知と書いて、「悉知院(しっちいん)」と読みます。
悉知(しっち)とは、願いを叶える場所という意味を持ちます。
如意輪観音菩薩は、数多くの仏様の中で財務大臣を司るとも言われ、福徳開運に力を発揮する仏様ですが、人々の煩悩を打ち砕く「宝輪」という仏具も持っています。従って、お願い事は控えめにしておきましょう。
※扁額:門戸や室内に掲げる横に長い額のような看板のこと。お寺の名前等が書かれていることが多い。